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入学式ナシで始まるポートランド流スクールライフ。入学式ナシで始まる
ポートランド流スクールライフ。

正装をして、緊張と期待が入り交じりながら迎える入学式。新一年生の記念すべき日には、そんなイメージがありましたが、ここ米国・ポートランドでは「なんとなくゆるゆると」小学校生活が始まるのだといいます。そもそも、入学式というものが存在しないのです。代わりにあるのが、入学前に行われる保護者のオリエンテーション。それも基本的な学校生活が説明される程度で日本に比べたらかなりあっさりしているようです。

新年度は9月スタートで、3ヶ月(!)という長い長い夏休みのあと。在校生には、休み明け前に「アイスクリームソーシャル」という催しが開かれ、クラス分け発表や夏の近況報告をしあって、新学年にむけ準備を整えます。とはいえ保護者や先生と共に、みんなでアイスクリームを食べつつ過ごすその時間は、決してかしこまったものではなく、始終ゆるやかでなごやかな雰囲気に包まれているのだそう。

通学バッグに特に規定はありませんが、主流はキャスターつきの子ども用スーツケースやスポーツブランドのバッグパックなど。しかし驚いたことにランドセル派も少なくないのだとか。というのも、今回お話を聞いた方の多くが公立のジャパニーズイマージョン(授業の半分を日本語で学習する)スクールに子どもを通わせているため。そこでは親日家も多く、日本人以外の親を持つ子でもランドセル派はちらほら。特別、珍しがられることもありません。“みんなと一緒”は日本ほど尊重されず、持ち物も服装も使い勝手がよく、「子ども自身が身につけていてハッピーならオールオッケー」という風潮です。そのあたりにも自由でおおらかなポートランドらしさが垣間みえます。

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給食に地産地消を取り入れる小学校が増加中給食に地産地消を取り入れる
小学校が増加中

学校生活での日本との大きな違いは、まず登下校の仕方が挙げられます。保護者同伴が必須で日本ではおなじみの防犯グッズはあまり見かけません。それよりも親同士がしっかりと連絡をとりあい、ときには交代で送り迎えしながら子どもたちを守るのが役目です。共働きの家庭が多く、夫婦でフェアに子育てするため、お父さんがお迎えに来る割合も日本よりずっと高いです。“DAD DAY”と名付け、週に数回は放課後から就寝までお父さん主導で家事育児をするというお宅もありました。これは我家でも取り入れたい!

ランチは給食かお弁当持参か選べ、教室ではなく、カフェテリアで各々とるところが多いです。個人的には、自分たちで準備し「いただきます」「ごちそうさま」の合図で一斉に食べて片付ける日本の方が、人と食を囲むありがたさやマナーを分かちあえていいように感じてしまいます。また貧富の差が激しい米国。住みよい街として知られるポートランドでもその問題は同様に存在し、一定の収入以下の家庭の子どもは朝食、昼食ともに無料で給食を食べることができるのだそう。貧しい家ほど冷凍食品やファーストフードに頼りがちなのが事実ですが、肝心の給食の内容は、残念ながら栄養的にかなり乏しいとのこと。

オーガニックや地産地消に定評のあるポートランドなのに!? と意外に思ったのは私だけではない様子。近年、ローカルファームと提携して旬を取り入れ、質の向上を計る学校も増えつつあります。メニューは旬のものをバランスよく取り入れた日替わりプレート、サラダバーのほか、人気はやはりピザやハンバーガー。定番のアメリカンフードもきちんとした素材で手をかけて作られているので、心にも体にも栄養満点で安心です。母として、一個人としても、食は最も大事にしていきたいだけに、この取り組みは今後もっと浸透していって欲しい限りです。

宿題は意外と多く、読書(毎日最低20分は読むように指導する学校も)や高学年になるにつれて自分の考えをエッセイでまとめることも増えてきます。また、ウィークリー、マンスリーと継続的に課題が出される場合もあり、子どもたちがそれぞれのペースで取り組めるような仕組みも。自己責任、自己管理が重視されるお国柄が、こんな学習方法にも表れています。

また、テストやそれによる成績付けが日本ほど重要ではない点も特筆すべきところ。それよりも個人の得意分野を伸ばそうとする教育方針、意識がしっかりと根づいています。「子どものやりたいという思いをとことんサポートし、どんな小さなことでもチャレンジしたことをめいっぱい褒める大人が多い。子どもを囲む大人の空気がすばらしいと思います」とは日本とポートランドで子育て経験を持つ先輩ママの言葉。「スポーツも勉強も、本人のやる気さえあれば、とことんやらせてもらえ、やればやるほど認めてもらえる。次のステージにつながるシステムがあるので、子どもにとっては、やりがいのある環境です。逆にのんびりやりたい子どもには、その意思を尊重し、子ども自身の取り組みを子どもに合わせてサポートするので、自己否定する子どもを見かけることが滅多にありません」。 “こうでなくてはいけない”、“こうあるべき”というよりも“自分がどうしたいか”。子どもたちは常に問いかけられることで、自分自身としっかり向き合い、自分の心を見つめながら成長しているようです。

街中には森のような公園が、住宅街には巨木が、あたり前に点在しているポートランド。それは自然との共生を常に尊重して街づくりがなされてきた結果であり、その市民の姿勢や精神が、のびのびとした子育て環境にも通じています。いわゆるアメリカのイメージとは違い、テレビのないお宅も多く、また雨の多い気候だからこそ、「天気が許す限り、外で過ごす時間を思い切り楽しみたい」と皆さん口を揃えます。

母になって4ヶ月。娘と近所の散歩が日課となり、改めて意識してみると、子どもたちが木に登って何やらお話していたり、兄弟そろってお父さんと一緒にバスケットやキャッチボールをしていたり、ゆったりとした放課後の風景がこんなにも身近に広がっていました。毎日が高速で過ぎ去っていく日々。遠い先のようなそんな小学校生活が、我が家の日常になる日も、きっとあっという間にやって来るのでしょう。

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瀬高早紀子Sakiko Setaka

ライター。2011年より米国、オレゴン州ポートランド在住。
2016年2月に第一子女児出産。
現地日本人ママとふたり「LIFE sampling」名義で旅人とローカルをつなぐ日常体験プロジェクトも手がける。
sakikosetaka.tumblr.com

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